予告なしの土砂放出 小屋平ダム

平成15年9月27・28日と10月2日、
出し平ダム上流の小屋平ダムに堆積していた土砂が、
ダム補修工事で大量に放出されたことがわかった。

小屋平ダムは黒部川にあるダム(上流から黒部、千人谷、小屋平、出し平、宇奈月)の、
上流から3番目のダムでヘドロ排出で訴訟中の出し平ダムの約10km上流にある。



(2003.Sep.16 小屋平ダム下流 画面左が本流)
要目
形式:重力式 頂長:119.7m 高さ:51.5m 有効容量:135000立米 
取水発電所:黒部川第2発電所 完成年月日:昭11.10.30

関西電力(株)が小屋平ダム左岸の発電所取水口の木材侵入防止柵の取替えるので、
ダム湖を空にするべく、9月27日午後9時から排砂ゲートを開放して、翌28日午前10時に完了した。
大量の土砂が排砂ゲートから流出し、
数キロ下流の鐘釣付近と10km下流の出し平ダムに堆積した。

小屋平ダムは黒部川水系のダムでは土砂堆積率96%で最も高く、満砂状態といえる
黒部川の秋の季節は水位が低い状態にあるので、排砂能率をよくするため、
上流の千人谷ダムのゲートを開いて下流の水位を上げ、
洪水吐きゲートのさらに下にある排砂ゲートを開いて、大量の土砂と水を一気に放出した。

出し平ダムと宇奈月ダムの排砂ゲートは閉じられていたが、
連携排砂時と同じく黒灰色の汚濁水は自然増水の薄茶色とは明らかに異なっていた。
出し平ダム・宇奈月ダムで希釈されたようだが、10月4日から9日頃まで、
河口付近が白く濁っているのが確認されている。
黒部川内水面漁業協同組合では、
排砂粒子が石に付着して藻類がアユの食べられない種類に変わる」と心配している。

8月29日、内水面漁業協同組合を来訪した関西電力北陸支社々員から、
文書と口答で工事説明があったが、土砂排出の説明はなかったという。
さらに、
出し平ダムの排砂で係争中の入善・泊漁業協同組合の海面漁業者には通知さえもなかった。


朝日新聞社の取材に対し、
関西電力は小屋平ダムの土砂流出の事実を認めているが、排出量は不明としている。
また、出し平ダムと下流の愛本地区の黒部川で、
目視と濁度測定の結果から下流への影響はないと、一方的に否定している。


(2003.Sep.16.鐘釣温泉上流 本流から0.7m上部で20cmの土砂堆積)

海面漁業者に事前説明しなかったのは、
「通常のダム運用でも増水時には排砂ゲートを開ける」
これまで海に影響したことはなく、今回も事前説明は不要と判断した」という。

内水面漁業協同組合ではこの5年間、連携排砂で毎年1250万円の漁業補償を受けている。
今後は今回の土砂流出の被害を含めた補償を要求する方針としている。

入善漁業協同組合は関西電力に対し、事前連絡がなかったことから、
土砂排出量の報告を求める代表理事名での質問書を提出した。

泊漁業協同組合は工事概要を記した書面の提出を求めた。


入善漁業協同組合理事で、出し平ダム排砂差し止め訴訟原告の佐藤宗雄氏は
「今回の土砂が出し平・宇奈月両ダムに溜まるから、
来年の連携排砂の被害が拡大するのでは」
と危惧を抱いている。

2004年(平成16)5月18日、黒部川土砂管理協議会は、
出し平ダム(関西電力)と宇奈月ダム(国土交通省)の本年度連携排砂計画を了承した。
6月から8月の期間中、約17万立米を排砂する予定である。
そのうち出し平ダムの土砂堆積量は昨年度より9万立米増加したと報告。
増加した堆積量の大半は小屋平ダムから流出したものと考えられる。

まもなく、北アルプスは降雨期にはいる。
黒部川へ流入する雨量は年平均約4000mmで日本有数である。
黒部川の平均河川勾配は1/40でこれまた全国有数だ。
おそらく山肌から崩落する土砂流出量も全国有数であろう


世界有数の急峻な黒部川にあっては、
水と土砂を堰きとめることなく、制御するだけにして常時流下させるべきものだ。
巨大なダムが5箇所でこれらを堰きとめることは、
たとえ電力供給のためとはいえ、
深刻な自然破壊なのである。


深山幽谷の景観を誇る北アルプスと渓谷、
黒部の清流と黒部川扇状地の豊饒、
豊かな海の幸をもたらす富山湾は地球の財産である。


飽くなき人間の欲望にさらすべきものではない。

                                     おわり

参考資料

朝日新聞、北日本新聞、排砂訴訟支援ネットワーク・きときと通信、
小屋平ダム・土砂堆積画像(排砂支援ネットワーク事務局長 提供)